「彷徨える陶磁器デザイン」 日本陶磁器デザイン協会 理事長 神谷幸男
2010年、21世紀になってもはや10年を経過してしまいました。
21世紀初頭に描いた夢や希望は図らずも暗雲の中に漂っています。
私がこよなく愛する「陶磁器」や「デザイン」は、そんな中で行き場を失い彷徨うばかりです。
私が陶磁器デザインに関わって35年、辛い経験もありましたが幸いにして挫折することなく現在に至っています。
しかし、この間どれだけの同輩、後輩たちが愛する陶磁器から去っていったことでしょうか。
自らの能力の限界を感じて去る者もありました。
しかし、多くはその劣悪な環境になじめず去り、また、優れた才能を持ちながらもそれを発揮する場が与えられず去って行きました。
「陶磁器デザイン」のその本来の姿は、土と炎による伝統の文化であり、生活に密着した食や暮らしの文化を担うという実に豊かな創作の営みであります。
苦境にあえぐ陶磁器産業がその苦境から脱する道はただ一つです。
その素晴らしい創作の営みに魅力を感じて産地を訪れた才能ある若者たちが生き生きと活躍できる「陶磁器デザイン環境」を整備し「創造システム」を構築することです。
今、生活者たちは、才能ある若者たちが創り出す新鮮で生き生きとした「陶磁器デザイン」を今かいまかと待っているのです。
<陶業時報・新年号に掲載されたメッセージです>
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